認めてほしい。
許してほしい。
櫛にからまった髪の毛を
一本一本取り除くように、
私の心にからみつく黒い筋を
指でつまみ取ってごみ箱に捨ててほしい。
人にしてほしいことばっかりなんだ。
人にやってあげたいことなんか
何一つ思い浮かばないくせに

綿谷りさが19歳で芥川賞を
受賞した小説「蹴りたい背中」の中の一文。
19歳の少女の感受性が
大人になった今でも私の胸をうつ。

だれもが人に理解されることを望む。
理解されたいと望み、
言葉を紡ぎ、語り、
誰かと感情を共有し、
共感してほしいと願う。

だが、時として、
人からの無理解に悶々とし、
あるいは、人への理解はおろそかになり、
ゴツゴツとした人間関係の軋轢に
苛まされる。

いつしかそれは
「櫛にからまった髪の毛」のように
心に絡まっていく。

そして、
「一本一本取り除くように、
私の心にからみつく黒い筋を
指でつまみ取ってごみ箱に捨ててほしい」とも願う。

しかし、
それでも人は誰かと感情を共有し、
共感したいと願い、
あるいは同情し、喜び、涙する。

いつだって人は
心のつながりを求めている。

多くの愛憎を繰り返しつつ、
そのなかでも人は
愛し、愛されることを
望んでいるのだ。

 

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