もともとA君は生徒の出欠をごまかす必要はなかった。
教室には国の方から運営費として生徒一人当たり
月額6万円が振り込まれ、
A君の講師代はそのなかから支払われていたからである。
しかし生徒のほとんどは
教室で受講する間、
月額10万円の生活給付金が支払われ、
その要件を満たすために出席率8割以上が必要だった。

A君はそこで生徒や教室責任者の要求、
つまり「出席をごまかしてほしい」
という要求をつっぱねればよかったのである。

しかし、結局A君は
生徒の出欠をごまかすことに加担してしまった。

そうした中、
とんでもない事件が起きる。

生徒の一人が黒のセダンで登校していたが
その車に「日本青年社」のステッカーを貼っていたのである。
「日本青年社」とは
住吉会系の右翼団体で
尖閣諸島魚釣島に灯台を建立したことでしられる。

そのステッカーをみた男二人が教室に怒鳴り込んできた。

「おい、前の車、だれのなんじゃ!」

「オレのっすけど」

「日本青年社とは住吉会のもんじゃろうが」

「それがどがんしたとや」

「ここをうろちょろするんじゃねえ」

「あんたに関係なかろうもん」

「この街に住めんようになっぞ」

「あんたらのシノギを邪魔しよっわけやなかろうが」

「なんいいよっとや!」

もう教室内は騒然とした雰囲気である。
そこに教室責任者であるYが間に割り込んできた。
おそらきYがうまく仲裁したのだろう。
教室に怒鳴り込んできた二人はおとなしく出て行った。

A君はYに尋ねた。
「あの二人なんね」

「A先生、心配せんでよかよ。
あの人はもともと嬉野でタクシー運転手をやってた人なんですけど
久留米の〇〇会(暴力団)に入ってのし上がった人やけん」

「あんたたち、やくざと関係なかろうね
やくざと関係あったら国の事業にかかわられんよ」

「A先生、おいは汚れはすかんけん関係なかよ」

よごれ、とはやくざの蔑称である。
しかし、このことは嘘だったことが後に明らかになる。
ここでもA君はこの教室から身を引くことができたのである。
だが、A君はYのいうことを信じ、その後も講師を続け、
また出欠のごまかしにも主導的な役割を果たした。

Point of no return.
A君は戻ることのできない一線をはるかに超えてしまった。

to be comtinued・・・・

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