カテゴリー: 幸福な人生への再スタート術

  • 自己治癒力を考える

    「心理療法の根本は、クライアントの自己治癒力に頼ることだ」(河合隼雄氏)

    これはユング心理学の大家、河合隼雄氏の言葉です。
    この人間観は私の考えと一致します。

    私自身も誰もが自己治癒力を有していると考えており、
    自己の根源的な部分に立ち返り
    最も深い部分の自分に出会うことによって、
    生きていくうえでの多くの知恵は
    そこに、用意されている、
    と考えています。
    それを私はDNA(Divine Natural Awareness:聖なる自然の知恵)と呼んでいます。

    河合隼雄氏はユング心理学を東洋的に解釈する中で
    私たちの意識の根源に仏教的な要素があることを指摘しています。
    直接的には言及してはいないものの
    輪廻転生のことにもふれてはいます。

    仮に輪廻転生が真理として、
    私たちは各々の生の中で
    「生きる意味」があり、
    「生まれてきた意義」があると考えていいでしょう。
    であれば、私たちはそれに応じた知恵(DNA)を
    意識的、無意識的に有しているといっても
    決して間違いではないでしょう。

    あるいは、ユングは人類に普遍的に共通する意識の層を「超意識」と呼んでますが。

    しかしながら、その自己治癒力がうまく機能しない場合もあり、
    そのため、河合隼雄氏は
    「自己治癒能力がうまく機能しない場合もあり、そのため心理療法家が必要になる」という主旨のことを述べています。
    しかしながら、その場合の心理療法家のサポートとは、相互作用の中で発揮されるもので、それはクライアントと心理療法家の間で主従関係が生まれるものではありません。

    このようなことを考えると、
    一般的に人を支援していく、
    サポートしていく、というのは
    おそらく、相手の自己治癒能力を信じて、
    その力をうまく発揮させるように仕向けていくことだと確信しています。

    さて、12月22日に熊本大学法学部のセミナーで
    岡田教授と加害者家族支援をしている阿部さんの講義を受講しました。

    加害者家族の状況は悲惨です。
    本来は、加害者家族が瓦解しないよう、
    なんとか支えて、加害者自身が更生するための基盤となるはずべきはずなのに
    社会全体で、加害者を出した家族を責め立てるという風潮が「常識」となっています。

    では、その「常識」が世界の「常識」かというとそうではありません。
    阿部さんがいうには
    「海外では加害者の家族がマスメディアの取材に応じて、答えるという場面もあり、実はそうした家族には励ましの手紙が届く」らしい。
    つまり、海外(特にキリスト教国)では
    加害者を出した家族を支援することが
    ひいては加害者の更生につながる基盤につながるものと
    認識されているのです。

    もちろん、加害者の家族に問題がなかったということではありません。
    逆に犯罪を通して家族の問題が顕在化されたという側面もあります。

    しかし、それを認識し、修復するのは
    その家族の固有の問題であり、
    第三者がその固有の問題にとやかくいっても
    まったく、無意味なのです。

    あえていえば、
    それぞれの家族が犯罪を通して
    それまでの歪みを認識、修復し、
    回復することが重要なのです。

    しかしながら、社会全体は
    「犯罪者を出した家族」に対しては
    まるで連帯責任のごとく
    責め立てるのです。

    そのことでその家族が崩壊し、
    その結果、加害者が社会復帰する基盤が
    失われたとして、
    それがまた、犯罪につながってしまうという
    負の連鎖を生み出していることに
    社会全体が気づいていない、ということです。

    日本の再犯率は6割と
    先進国の中でも非常に高いそうです。

    それにもかかわらず、
    「加害者家族支援」については
    批判的な人も多いのです。

    曰く、
    「加害者家族支援よりも被害者支援の方が重要」という意見です。

    では、「被害者」に対して、社会全体が本当に支援しているかといえばそうではありません。
    いや、社会全体がまるで「被害者」にも落ち度があるように責め立てているのが実態です。

    私は熊本市にお住いの3歳の娘さんを平成23年に殺害されたSさんのお話を直接お聞きました。
    娘を殺害されて、さらにSさんのところには「おまえが子どもをきちんとみていなかったからだ」という批判にさらされます。

    さらにいえば、性被害者に対する
    「おまえがそういう恰好をしているからだ」といった
    まったくピント外れの批判も多いのです。

    これが社会の実態です。
    こういう状況がいいのか、ということですが、
    ここで優先すべき課題は
    まずは、被害者側の心のケアでしょう。
    しかし、実際には被害者も責め立てているのが実態なのです。

    つまり、「あなたの責任である」という命題を
    相手を責め立てる方便としてしか使っていないわけです。

    私自身も全ては「あなたの責任である」という考えですが、
    それは、その人自身に「自己治癒能力」があり、
    そこに立ち返り、
    周囲の理解があれば
    立ち直れる、という意味で使っております。
    つまりスタンスがまったく異なります。

    さて、元受刑者の社会復帰にしても
    また、これまでのまでの「常識」が必ずしも有効とはいえません。

    熊本大学の岡田法学部教授にいわせると、
    「反省しろ、反省しろ、と頭を押さえつけて、
    社会の隅っこに追いやっている。
    与える仕事も肉体労働ばかり」というのが実態です。

    イギリスの研究によると
    実際に社会復帰している元受刑者の多くが
    「人から受容され、評価されたころが復帰のきっかけになっている」
    そうです。
    元受刑者に対して反省を求められるるのではなく、
    社会に有益な行動を求め、
    ヒューマンリソースとして
    活用していくことの方が
    社会全体としては最適であるはずです。

    ところが、「社会の隅っこにいろ」とばかりに
    追いやってしまっていることが
    再犯につながっていることに気付くべきでしょう。

    「すべてはあなたの責任である」
    それは私にとって、
    誰しもが自己治癒力を有しており、
    よって、そのひと自身の力で十分回復できる、
    修復できる、立ち直れる、という意味です。

    相手を突き放し、責め立てることばではありません。


     

     

  • 受刑者の若者との文通②

    北海道の受刑者であるS君への返信をやっと書き終えた。
    手紙を書くというのはやっぱりパワーと時間が必要ですね。
    今日は午前中空いているので、
    こういう時間帯に書かないと、なかなか書けない。

    社会復帰に向けて
    残りの刑期をどう過ごしていったらいいのか、
    それはとても重要なので、
    いろいろアドバイスさせていただきました。

    社会の中で
    「自分が必要とされ、感謝されること」
    このことを行動基準におけば
    いろいろ困難はあっても
    状況は好転していきます。

    孤独と絶望の対極にある価値は
    愛と希望です。

    受刑中であっても
    希望の灯を持ち続けてほしいですね

  • 受刑者との文通①

    刑務所で受刑中の男性と文通始めました。
    先月、手紙をおくったところ、
    今日、返事がきました。
    年齢は32歳、満期出所まであと4年半とのことです。
    丁寧な文字で書かれてあり、
    私の仕事、WEB解析士の仕事にも興味があるとのことです。

    出所時、まだ30代なので、
    まだやりなおしは効くでしょう。

    私が説教じみたことをいうことはまずない(笑)

    自分を見つめ、
    自己と対話することをすすめてます。

    自分の過去、家族のことなど
    眼をそむけたくなるような自分のことから
    目を背けず、みつめることが
    再スタートのための起点となります。

    そこから自分のコアになるものをつかんで
    無駄なもの、腐った部分を剪定し、
    新しい方向にむけて、再スタートできるかどうか。

    なんとかいい相談相手になれて
    彼の新しい人生に
    いい意味での影響を与えることができれば
    幸いです。

  • 実は実話・・・⑥-16

    「裁判はどうだったんですか?」

    「まずは検察側の冒頭陳述がありまして、それから、証拠調べの請求があります」

    「緊張しましたか?」

    「それはそうですよ」
    「ただ、裁判長が女性だったのには驚きました」

    「へ~っ、そうだったんですか」

    「えぇ、〇〇法子さんという裁判長で、私はノリピーといってました」

    「ノリピー、ですか・・・」

    「それが眼鏡が似合う知的美人でして・・・」

    「裁判の場でしょうに!」

    「ええ、でも久しぶりに女性を見たもので・・
    しかも黒の法衣に眼鏡がよく似合う女性でして・・・」

    「不謹慎きわまりない・・・」

    「まともに裁判長の顔をみれませんでした」

    「それはどうして」

    「いや、ニヤケテしまいそうで・・」

    「それは印象悪くするでしょうね」

    「それで、裁判ではあなたは出欠をごまかしたことは認めたんでしょう?」

    「はい、それは認めました。」

    「では暴力団組長との詐欺の共謀については?」

    「実際には三傘とのあったのは1回きりでして、その場ではそういう話はなかったんですが・・・法的には共謀したことは認めました」

    「えっ?だって三傘とは共謀の話はなかったんでしょう?」

    「はい、そうなんですが、私は嬉野の末尾、久留米の早河とは最初からいとしていたわけではありませんでしたが、結局、出欠をごまかすことは共謀しましたし、彼ら二人はおそらく三傘と段取りを組んでいたはずですので、私が直接三傘と共謀しなくても、末尾、早河が三傘と共謀していたのであれば、間接的ではあるにせよ、私は三傘と共謀したことになるんです」

    「えっ??そうなんですか?」

    「はい、直接共謀はなくても間接的であるにせよ法的には共謀したことになります」

    「う~ん・・・なんか不条理な話ですね」

    「まあ、そうですが仕方ありません。ただ、私が開校前に認めていたのは遅刻や早退は大目に見るというくらいでしたので、まさか欠席をごまかす羽目になるとは思ってもいなかったんです」
    「それがメールで『遅刻や早退は大目に見るが欠席のごまかしは糊塗できない』と送っていたことが証拠として提出されていました」

    「そういうメールが残っていたことは不幸中の幸いですね」

    「えぇ、ただ裁判ではやはり警察、検察の取り調べの実態がどうだったのかが、争点のひとつとなったのです」

    「どうして?」

    「私が裁判でひっくり返した供述がとられてしまった背景には何があったのか?ということがやはり裁判での検証すべき大きな争点となったのです」
    「これは一般の人にはなかなかわからないことですが、やはり、取調室の密室の中では、恣意的に供述が捜査機関によって誘導され、ねつ造に近い供述がとられることの危険性があることを示すものでもあるからです」

    「まあ、その辺のことはまた次回にお話を伺いましょう」

    to be continued・・・・

  • 【元受刑者WさんからTELあり・・・】

    【元受刑者WさんからTELあり・・・】
    先ほどまで電話でWさんと長電話していた。
    Wさん、50代の元受刑者。
    Wさんが出所した同じ日に
    出所したまだ30代のX君のことを
    息子のように気にしていて、
    X君を時折食事に誘っていた。

    しかしX君、出所後1年間で3回職場を変えたらしい。
    そして、窃盗で逮捕。
    弁護士からWさんに連絡が入り、
    事件を知ったらしい。
    Wさん曰く
    「辛抱足りねえ、辛抱できない奴はやっぱりだめや」

    Wさん、出所後のX君を自宅に招いて、
    食事をふるまったり、
    弁当をつくってあげたりしていたらしい。
    30代なので立ち直ってほしい、
    Wさんの切なる思いも水泡に帰した。

    Wさん、出所後、CADの資格を取得し、
    今は、清掃会社に入社、普通に生活している。
    それだけに、Wさんのくやしさが電話で伝わってくる。

    WさんはX君を受け入れた。
    しかし、WさんのやさしさをX君は裏切った。

    単純に、X君が悪い、というわけでなく、
    ただ、悲しいのだ。

    もう「お前が悪いだろ」的な話でなく、
    罪の負のスパイラルから
    抜け出してほしい、だけなのだ。

    罪を責めることを第三者が責めるのはもうやめてほしい。
    そうではなく、
    罪から救い出すことが大切なのだ。

    それはまた私自身が身をもっていえることでもある。

  • 実は・・・実話⑥-14

    「独居房での生活はいつまで続いたんですか?」

    「平成26年の1月から7月までです」

    「長いですねぇ」

    「まあ、そうですね。一番困ったのは4~7月ごろです」

    「どうしてですか?」

    「暑くなってくると、やはり汗かきますし、体が汗臭くなってくるんです。でも入浴は週に2回なんで、自分の汗臭さがたまらなくなってくるんですね」

    「週に2回しか入浴できないんですか?」

    「はい、それであまりに汗臭いんで、ついついタオルを水で濡らして体を拭いたんです」

    「まあ、普通にそうしますよね」

    「いえ、それが拘置所内では禁止されてるんですよ」

    「えっ、そうなんですか?」

    「はい、それが刑務官に見つかりまして、懲罰を受けました」

    「懲罰ってどうなるんですか?」

    「私の場合は1週間、独居房内でドアに向かってずっと座っているというものです。あぐらはかいてもいいんですが、姿勢を崩すことはゆるされませんのできついんですね」

    「それはきついですね」

    「まあ、ただ自分は座禅を組んでいると思って、いわゆる内観という瞑想にふけることにしました」

    「う~ん・・・なんか前向きなようで、いいかげんなようで・・」

    「でもやっぱり、自分にとって意味のあるものにしないとやってられないですよ」

    「まあ、そうですね」

    「それで7月に雑居房に移りました。」

    「へえ、やっと人と話せる環境になったんですね」

    「ええ、まあ、そうなんですが、どうもその雑居房では事前に刑務官から『かなりゆるいやつが入ってくるぞ』といわれていたようで、そこの住人は『ちょっとしめたろか』という思っていたそうです」

    「えっ、じゃあ、いじめにあったんですか?」

    「いえ、そんなことはなかったんですけど、そこの一番席の人は『オレがしつけてやる』という感じで思ってたそうですね」

    「一番席ってなんですか?」

    「部屋に入った順から一番席、二番席と席順が決まっていて、古い人ほど、まあ、その部屋のリーダー格になるわけです」

    「へえ、じゃあ、何人いたんですか?」

    「私も含めて6人です」

    「何畳部屋なんですか?」

    「9畳ですね」

    「同居人とはうまくいきましたか?」

    「かなりおもしろいメンバーでして・・・
    国際商品先物の営業で億単位の金を集めて詐欺罪で起訴された吉田(仮名)さん、
    借金の取り立てで恐喝した国松(仮名)さん、
    元郵便局職員で6千万円横領した平山(仮名)さん、
    コソ泥窃盗の白田くん、
    奥さんとレスになってついつい従業員に強制わいせつした大塚さん
    まあ、この5人でしたけど、
    なんか面白かったですね」

    「なんかすごいメンツですね」

    「まあ、どちらかといえば軽犯罪のメンバーです。でも隣の部屋は殺人罪の被疑者が2人いましたんで、それからすると、普通に話ができる付き合いやすい人たちでした」

    「隣の部屋は人殺しですか?」

    「ええ、そのうちの一人は2歳になる実の息子の殺人で起訴されてますから、ちょっと、異様ですね」

    「げっ、それはたまらんですね」

    「ええ、その人は妖気が漂っていて、半径3メートル以内には近づけないほどでした」

    「もう一人は出会い系サイトで知り合った女性とエッチしたあと、その女性から金銭を要求されて、振り切って車で去ろうとしたさい、その女性を引きずってしまって死に至らしめたという人で、もうこの人も病んだ表情をしていましたね」

    「はあ・・・そうなんですか」

    「だから、本当に殺人を犯したかどうかはその人の表情や雰囲気でわかります」

    「そうなんですか」

    「はい、そうですね。だから殺人の冤罪を主張している人を3人知っていますが、あっ、この人はやっぱり冤罪だなってだいたいわかります」

    「殺人の冤罪はきついですね」

    「まあ、そうですね。そのうちの一人は22年の刑期を終えて再審請求しています」

    「22年の刑期ですか・・・」

    「そういうヘビー級の人たちからすると、同居人は罪を犯したといっても社会では普通の生活をしていた人でしたので、普通の話ができてよかった方ですね」

    「雑居房での生活はどうだったんですか?」

    「それはまたのちほどお話しします」

    To be continued・・・

  • 実は・・・実話⑥‐13

    Aさんとの対話は続く

    「6か月間も人と会話ができないというのはちょっと想像できないですね」

    「まあ、普通はそうです。接見禁止というのは弁護士以外とは話せないのですから。手紙のやり取りも弁護士以外は禁止です」

    「ご家族のことは心配ではなかったのですか?」

    「もちろん、心配ですよ。ですから、『無事なように』と祈るしかないですよね」

    「はあ、そうなんですね」

    「当時は特に信仰する宗教がなかったのですが、このことが私が宗教に関心をもつきっかけとなりました」

    「どんな宗教に関心をもったのですか?」

    「のちに刑務所に行くことになりましたが、刑務所では宗教講和を聴講することができたんです。」

    「そこで、真言宗、金光教、浄土宗、浄土真宗、黄檗宗、臨済宗、カトリック、日本基督教団、パブテスト、天理教とあらゆる宗教講和を聴講しました」

    「すごいですね」

    「出所してからは、カトリックの洗礼を受けてます」

    「弁護士とのやり取りはどうだったんですか?」

    「弁護士とは主に手紙でやり取りして、週に1回30分ほどの面会が可能でした」

    「どんな弁護士だったんですか?」

    「まだ20代のイケメン弁護士でした。ラサール、東大とエリートを絵にかいたような弁護士でした」

    「ともかく、自分の弁護をするつもりで事件の経緯をまとめながら、抗弁書の起案の素案となるものを書いて弁護士に郵送してました」

    「えっ、自分で抗弁書を書いてたんですか?」

    「はい、弁護士も驚いていましたね。こんなこと書いてくる被疑者は初めてです、って」

    「ともかく、事実をベースにして、論点を明確にして、それを論理的に組み立てるという作業なんです」

    「はあ・・・・」

    「弁護士が気にしていたのは『本当にAさんはヤクザのMと詐欺の共謀の打ち合わせをしたんですか』ということでした」

    「していないんでしょ?」

    「はい、暴力団組長のMとは1回しか会っていませんし、その時の打ち合わせでは『嬉野と久留米で教室を開講しよう』ということしか決まってなかったんです」

    「でも、取り調べであなたはその1回の打ち合わせの際『出欠をごまかす打ち合わせをした』と供述してますよね」

    「はい、その時は私以外にMを有罪に持ち込む供述するには誰もいないことはわかってましたし、刑事も検事も私に頼ってましたから。取り調べの最中はMを有罪にすることが正義と思い込んでました」

    「でも弁護士から『Aさん、いくら相手がヤクザでも事実を曲げて有罪にもちこんではいけないですよ』といわれて、そうだな、と思い直したんです」

    「でもそこが今回の事件の核になるんでしょ?」

    「はい、私の供述しか刑事も検事もMを有罪にもちこむ手段はなかったんですから」

    「でもよく考えて下さい。私はMとは『地元の有力者』といわれて人からの紹介で1回しか会ってませんし、共犯者は他に40人にもいるのに、他の共犯者から何の供述も取れないこと自体がおかしんですよ」

    「う~ん、それでは裁判は紛糾するのではないですか」

    「はい、そうなんですけど、Mを有罪にするのは検察の仕事であって、私は事実をいうだけです」

    「それはそうですね」

    「接見禁止中の6か月間は大変きつかったんですけど、実はこの間の生活習慣が今の生活のベースになってるんです」

    「へえ、今でもそうなんですか?」

    「はい、まずは粗食になりました。拘置所の食事は3割麦が入った麦飯ですが、今では玄米食です。
    また、拘置所内では腹筋、腕立て、スクワットを1日100回やってましたが、それは今でも続いてます。
    それに座卓で勉強する習慣、布団を四隅をあわせて畳む習慣など、ここでの生活がベースになってます」

    「生活習慣が矯正されたんですね」

    「まあ、そうですね。それに宗教をもちえたことも大きいです」

    「カトリックの洗礼を受けたんですね」

    「はい」

     

    Aさんとの対話はまだまだ続く。

    To be continued・・・

  • 実は・・・実話⑥-10

    さて、A君、刑事の執拗な取り調べ、
    「Aさん、いっしょにMをやっつけようや、
    あいつが一番悪いいんやろ?」
    「思い出せんかったら、絞りだせ」
    というセリフに結局折れてしまった。

    A君からすれば自分が暴力団組長Mに関する
    なんらかの有罪に持ち込む供述をしないと
    自分がMをかばっているようにも思われるのもしゃくだし
    かつ、それが正義だと思うようになった。

    そして、結局、暴力団組長と
    「生徒が休んだ場合、出席をごまかすこともできる」
    という会話をした、と供述してしまった。

    しかしA君、その後も逡巡する。
    「事実でもないのに、あんな供述していいのか?」と。

    悩んだ末に
    検事に対して素直に申し伝えた。
    「いや、検事さん、久留米のファミレスでMと会った時には
    久留米と嬉野で教室を開催することしか話さなかった」
    「そこで出欠をごまかすという相談はなかった」と。

    実際、A君は教室開催後、
    生徒の出席があまりに悪いので
    困りきって教室責任者に
    「遅刻は大目に見るが、欠席をごまかすことはできない」とメールで送っていたからだ。
    このメールが後に裁判で重要な証拠となる。

    しかし、取り調べの検事、
    顔を真っ青にして
    「いや、Aさん、いまさらそういっても困る」
    「そんなこといわれたら、
    いままでの供述のすべてがおかしくなるじゃないですか」

    「いやね、Aさん、
    Aさんが暴力団の仲間とは全く違う流れにっていることはわかってるんですよ」
    「Aさんが集めた生徒の出席はいいし、
    かつ、あなたが生徒に対して『欠席をごまかしてもいい』という発言を一切していないこともわかっている」

    「Aさんと暴力団の組織的な動きとは全く違うので
    それを同じにすることはない」

    ここまでいわれると
    (じゃあ、組長のMを有罪に持ち込む証言をしたら求刑は軽くなるのかな?)
    とA君は思ってしまった。
    ところがのちに検事はとんでもない求刑をするのだが・・

    A君、連日8時間に及ぶ取り調べ、40日間の生き地獄を経て
    拘置所に移送になった。

    しかし、A君が移送された拘置所は
    まさしく幽霊が出ることで有名な福岡拘置所、
    そのなかでも最悪のC棟3階であったのだ

    To be continued・・・・

  • 心理カウンセラー諸岡さんとの出会い

    佐賀県内で心理カウンセラーとして活動していらっしゃる諸岡さん。
    諸岡さんとの出会いは知名弁護士のご紹介で昨年末、居酒屋でお会いした。
    諸岡さんは非行少年の心の回復プログラムも実践しているそうだ。
    私は元受刑者の社会復帰のためには
    心の回復、あるいは修復が必要だという考えを持っていますが、
    幸い、知名弁護士の紹介で
    諸岡さんとお会いすることができた。

    また、昨日もファミレスで再開し、
    いろいろお話したところ、
    諸岡さんとは知名弁護士のご紹介以前に
    ある異業種交流会で会っていたことが分かった。
    不思議なご縁だな、と思う。
    おそらく会うべくして会ったのでしょう。

    諸岡さんも私も
    罪を犯した人の社会復帰のためには
    「心の回復、修復が必要」という考えです。

    元受刑者を
    罪を犯した人を自分とは峻別し、
    「モラルが欠落した人」とみなし、
    説教する、か遠ざけるかというのが大方の態度そのものが
    間違っているという立場です。

    私が今まで出会った「ちゃんと社会復帰した元受刑者」の人たちの多くが
    罪を犯した原因を自分の生い立ちから見つめなおし、
    心の回復という内的プロセスを経ていました。

    立命館大学の森久教授にいわせると
    罪を犯すという結果に至るまでには
    「本人の特性のみならず、その置かれている状況、
    文脈、他者との関わり等、
    多様な要素が偶然(不幸)にも
    絡み合った結果として、
    本人は犯罪という「現象」に至るのです。」

    単純にモラルの欠落が犯罪にいたるわけではなく、
    さまざまな要因が絡まりあっており、
    そのなかでも
    心の病んだ部分、傷んだ部分、小さな闇、
    そうしたメンタル部分での修復、回復が
    罪を犯した者の再起のための
    必須要件であると考えており、
    かつそうした認識を社会が持つべき、と考えています。

    そういう立場に立っていますので
    相手の内面を見ずにして
    安易に説教するという態度はすべきでないと考えます。

    諸岡さんとも
    そうした罪を犯した人の再起のためには
    メンタル面でのケアが必要という考えで一致しており、
    今後は諸岡さんと協力して
    非行少年、元受刑者の社会復帰のための活動を
    行ってまいりたいと考えております。

  • 実は・・・実話⑥-1

    佐賀県内に住むA君。
    平成23年当時、パソコン教室の講師を務めていた。
    厚労省が実施していた就労支援事業の一環で
    就労を希望する人たちに職業スキルをつけさせ
    また、受講中、生徒は一定の要件を満たせば、
    生活給付金を受給できるという制度だった。

    そしたら、嬉野市に住むY君から
    「Aさん、久留米市のある有力者で
    パソコン教室を新たに開きたい、という人がいるんだけど
    会いませんか?」
    と誘いを受けた。

    そこで、A君、Y君の紹介で久留米でM兄弟とあった。
    Y君の紹介ではMさんは「久留米の地元有力者」
    ちょっと雰囲気が
    「ちょいワル」風だったのが気になったが
    久留米の中小企業経営者には
    こういう雰囲気の人も多いので
    A君は特に気にせず
    M兄弟に厚労の就労支援事業について
    説明した。
    そこに同席していたM兄弟の部下と思える2人が
    久留米と嬉野でファイナンシャルプランナーとパソコンを教える就労支援の教室を開くことで話がまとまった。
    時は平成22年の8月、暑い日の昼下がりだった。

    to be continued・・・・