実は・・・実話⑥-10

さて、A君、刑事の執拗な取り調べ、
「Aさん、いっしょにMをやっつけようや、
あいつが一番悪いいんやろ?」
「思い出せんかったら、絞りだせ」
というセリフに結局折れてしまった。

A君からすれば自分が暴力団組長Mに関する
なんらかの有罪に持ち込む供述をしないと
自分がMをかばっているようにも思われるのもしゃくだし
かつ、それが正義だと思うようになった。

そして、結局、暴力団組長と
「生徒が休んだ場合、出席をごまかすこともできる」
という会話をした、と供述してしまった。

しかしA君、その後も逡巡する。
「事実でもないのに、あんな供述していいのか?」と。

悩んだ末に
検事に対して素直に申し伝えた。
「いや、検事さん、久留米のファミレスでMと会った時には
久留米と嬉野で教室を開催することしか話さなかった」
「そこで出欠をごまかすという相談はなかった」と。

実際、A君は教室開催後、
生徒の出席があまりに悪いので
困りきって教室責任者に
「遅刻は大目に見るが、欠席をごまかすことはできない」とメールで送っていたからだ。
このメールが後に裁判で重要な証拠となる。

しかし、取り調べの検事、
顔を真っ青にして
「いや、Aさん、いまさらそういっても困る」
「そんなこといわれたら、
いままでの供述のすべてがおかしくなるじゃないですか」

「いやね、Aさん、
Aさんが暴力団の仲間とは全く違う流れにっていることはわかってるんですよ」
「Aさんが集めた生徒の出席はいいし、
かつ、あなたが生徒に対して『欠席をごまかしてもいい』という発言を一切していないこともわかっている」

「Aさんと暴力団の組織的な動きとは全く違うので
それを同じにすることはない」

ここまでいわれると
(じゃあ、組長のMを有罪に持ち込む証言をしたら求刑は軽くなるのかな?)
とA君は思ってしまった。
ところがのちに検事はとんでもない求刑をするのだが・・

A君、連日8時間に及ぶ取り調べ、40日間の生き地獄を経て
拘置所に移送になった。

しかし、A君が移送された拘置所は
まさしく幽霊が出ることで有名な福岡拘置所、
そのなかでも最悪のC棟3階であったのだ

To be continued・・・・

実は・・・実話⑥-9

1つの事件での逮捕による拘留期間は20日間である。
その期間が過ぎて、さらに逮捕されると
(このことを再逮という)
さらに20日間拘留される。
A君は嬉野の事件で逮捕され、
さらに久留米の事件で再逮された。
つまりA君は40日間拘留され、
連日、法定の上限である8時間の取り調べを連日受けた。
取り調べ担当者は暴力団専門の刑事である。

A君は組長であるMとは1回しかあっていなかった。
刑事はA君を追い詰めていった。
「Mは生徒が来なかったらどうすっとや?と聞いてきたやろ?」
「生徒が来ない場合のリスクを聞いてきたやろ?」

刑事はどうしてもA君から
Mが生徒が来なかった場合の対応を聞いてきた、
という供述をとりたかったのだ。

しかし、そもそもA君がMとあったその日は
嬉野と久留米で教室を開校しようということしか決まっていなかった。

この段階でのリスクとは
生徒が集まらない場合のリスクであり、
生徒が出席しない場合のリスクは考えない。
そもそも刑事の言うリスクの意味が的外れなのである。

A君は懸命に説明した。
「いや、刑事さん
ここでいうリスクは生徒が来ない場合のリスクです。
この段階で生徒が出席しないことなど考えられない」
なにしろ生徒にとっては受講するだけで生活給付金が得られるのである。
この段階で欠席など考えられなかった。
いくら説明しても刑事は理解しない。
というより、
Mが生徒が欠席した場合の対応を聞いてきたことにしなければ
Mを有罪にもちこめなかったのである。

刑事はさらにA君を追い詰めた。

「Aさん、一番悪いのはMやろ?
一緒にあいつをやっつようや」

刑事はさらにとどめのセリフを吐いた。

「Aさん、思い出せんやったら
絞りだしてでも出せ!」

A君はこの刑事のセリフを
「Mを有罪に持ち込む供述を嘘でもいいからしろ」
という意味にとらえた。
A君は逡巡した。

「刑事さん、少し考えさせてください」
A君は昼食時間をとる間、考え込んだ。

ヤクザが無罪になるのはおかしい。
誰も供述しないのなら、
自分が差し違えても
Mを有罪に持ち込むべきだ。

A君は連日の取り調べで
ほとんど洗脳状態になっていた。
そしてA君は午後の取り調べで
このように供述した。

「Mが生徒が出席しない場合の対応を聞いてきたので
私は、出欠をごまかすこともできますよ、と答えました」

その日、警察の取調室に早速、検事がやってきた。
つまり、「しめた!」と思ったのである。
そして検事もその供述書を作成し
A君はそれに署名した。

まあ、こうやって冤罪はつくられていくんですね
なにしろ刑事自身もいってますから
「供述書はおまえの言う通りには書かない」と(笑)

A君はとうとう警察と検察のシナリオに
そった供述をすることに心は折れてしまった。
しかし、その後も
A君は嘘の供述したことについて
悩み続けることになる。

実は・・・実話⑥-7

A君は詐欺の容疑で逮捕された。
佐賀バルーンフェスティバル開催の前日であった。
翌日の新聞報道では、
久留米暴力団の二次団体組長の名前Mと
教室責任者2名及び生徒、
そしてA君の名前が掲載された。

暴力団が国の助成金目当てに
詐欺をしたことで全国ニュースとなった。

久留米の教室責任者のHはその組員であった。
嬉野教室の責任者はすでに組員ではなかっただ
かつて別の組の所属していた人物であった。
そしてその後明らかになったことだが
久留米、嬉野のそれぞれの教室責任者は
生徒募集の際、
「出欠をごまかしてやるから
名前だけでも応募しとかんね。」
といって誘っていたのである。

A君はそういう背景を全く知らなかった。
そもそも暴力団組長Mにあったのも
嬉野に住む知人Y君から
「久留米の地元有力者が
開校したいっている」といわれて会ったのである。

まあ、確かに地元の「有力者」ではある。
対立する組織があるとはいえ
地元最強の暴力団であるからだ。

逮捕されたA君、
その取り調べに当たったのは
特別組織暴力捜査班の係長だった。
通称「トクボウ」
組織暴力のチームの中でも選りすぐりのチームであり、
そのなかでも現場では
最も力のある係長である。

A君の地獄の取り調べが始まった。

To be continued・・・・