20世紀最大の画家バルテュス。
バルテュスは個人的な生活を公にすることはなく、
バルテュスによればそれは
「自分は画家としてのみ公に属するのであり、
私生活は自分の作品を理解するのに何の役にも立たない」という。
この書はバルテュスが自らの生い立ち、
交友関係、芸術文化にわたって語った
唯一の書といっていいだろう。
バルテュスの最初の画集はなんと11歳の時。
8~10歳までに描いた
愛猫「ミツ」のデッサンが
11歳のバルテュスに出会った
詩人リルケの目に留まり、
バルテュスの処女画集が発刊された。
その序文をリルケが書いている。
またリルケは13歳のバルテュスと
中国美術の系譜について語り合ったという。
そしてバルテュス22歳の時、
リルケから紹介された
パリに住むアンドレジイドの邸宅に
客として住むことになる。
ともかくバルテュスの交友関係がすごい。
ピカソ、ジャコメッティ、サルトル
カミュ、ジャックラカン、ロランバルト
ジョルジュバタイユなどフランスの芸術文化の
最高の人物と交流している。
特にピカソはバルテュスの絵画を購入している。
バルテュスは自身の絵画のことを宗教絵画といっている。
具象画でありながら、
絵画の隅々にいたるまで満ちている静溢な神性。
それがバルテュス絵画の魅力だろう。
そして日本のこと。
日本で出会った女性セツ子さんを後に妻とする。
親日家の一面もみせる。
この対話を通じてわかることは
バルテュスの文化芸術に関する理解の深さである。
限りない知性と教養に裏打ちされた芸術家であることがわかる。
バルテュスファン垂涎の書である。