嬉野と久留米で就労支援事業の一環としてスタートしたパソコンとファイナンシャルプランナーの教室でA君は講師を始めた。
開校初日、それぞれの教室には30人ほどの生徒が出席したが、翌日から出席者生徒数は5~8人程度。
あまりの出席の悪さにA君は教室責任者であるXとYに電話で「ともかく生徒を出席させてくれ」と頼んだ。
何しろ、A君は今回の教室開校のため、4名ほどの講師を集めており、講師陣から「あまりに出席が悪い」と突き上げられていたからだ。
それに、たまに出席する生徒がいると、それぞれの理解度が異なり、まとまった授業ができず、結局、個人指導のようなスタイルになってしまうからである。
嬉野校の教室責任者であるXは連絡が取れるからまだましな方で、久留米校の教室責任者であるYにいたっては電話にもでないというありさまだった。
しかもYはA君の講師仲間に「認印を貸してくれ」と頼んでおり、A君は「Yは講師の認印を使って出欠をごまかす気だ」と直感し、Yに「人の認印を使うのはやめてほしい」と頼んだ。
また、A君は「遅刻は大目に見るが、欠席を出席にするのは糊塗できない。」とYにメールで送った。これが後の裁判で大きな意味を持つようになる。
月末、授業の進捗状況、生徒の出欠状況を国の機関に書類を提出しなければならない。
しかし、生徒の出欠状況は一部の生徒を除いてほとんどが出席率8割を満たしていなかった。
とはいえ、生徒のほとんどはまとまった収入がなく、今回の就労支援事業の教室に出席することで生活給付金を得ようとしていたことは間違いなく、だが、生活給付金を得るためには8割以上の出席がなければならない。
A君は生徒と教室責任者と共同で生徒の出欠をごまかした書類を作成することに協力した。
A君が一線を越えた瞬間だった。
to be continued・・・・