他愛ない日々に恋歌を

他愛ない日々に
言葉を添えたかった。

かつて、1日、人と話せない日が
6か月続いたことがあった。

愛する人に「愛している」といえるだけでも人は幸福なのだ。

気障だと思われようが、
それが真実だ。

日々はいつしか過ぎていく。

だから、
そうした他愛ない日々への
愛情を言葉で表現したかった。

それが恋歌だと思う。

妻に、子どもたちに、
かつて愛した人に、
幼なじみに、
本当はもっと親しくなれたはずなのに
なぜか、そうはなれなかった人たちに・・

愛していると、と。
どれほどの言葉を駆使しようとも
伝えたいことはそれだけだ。

他愛ない日々に
香りのある言葉を添えよう。
愛する人に
恋歌を贈ろう。

紅茶にシナモンの甘い香りを添えるように。

 

大人の恋歌

恋歌を書いてみたかった。

「古今和歌集」以降、
歌の王道は恋歌だ。

かつて、男は愛する女性へ
和紙に恋歌をしたため、
歌を贈った。

そして女性は男からの恋歌に
返歌を贈りかえした。

五・七・五・七・七という
短い文の中に込められた愛する人への想い。

言葉を選び、自らの想いをそこに凝縮していく。
五・七・五・七・七というわずか31文字の中に。

凝縮されているがゆえに
言葉は結晶となる。
そしてその結晶に芳醇なまでの愛情が満ち溢れている。
だからこそ、言葉が輝く。

艶っぽく、
輝くほどに。

恋歌が美しいのは、
それが愛情に満ちた言葉の結晶だからだ。

大人だからこそかける恋歌。
大人の恋歌。

艶やかに
それでもピュアに。