受刑者の若者との文通②

北海道の受刑者であるS君への返信をやっと書き終えた。
手紙を書くというのはやっぱりパワーと時間が必要ですね。
今日は午前中空いているので、
こういう時間帯に書かないと、なかなか書けない。

社会復帰に向けて
残りの刑期をどう過ごしていったらいいのか、
それはとても重要なので、
いろいろアドバイスさせていただきました。

社会の中で
「自分が必要とされ、感謝されること」
このことを行動基準におけば
いろいろ困難はあっても
状況は好転していきます。

孤独と絶望の対極にある価値は
愛と希望です。

受刑中であっても
希望の灯を持ち続けてほしいですね

出所したてホヤホヤの青年

出所して間もない青年と出会った。
いろいろ話を聞くと
よく自分のことをみつめていた。
曰く
「あの頃、悪いことやっているのがカッコいいと思ってた」
「人を従属させたかったんですよ」などなど・・・

そして
「もう、まじめにやっていきたいんです」

刑務所で日商簿記の2級を取得し
1級の資格をすでに視野に入っているようで、
日商簿記1級の資格をとれたら
税理士の資格試験を受験できる。

WEBもやりたいらしく
「ワードプレスでサイト製作したいんです」と

あぁ、この青年は大丈夫だな、と感じました。
自分自身のことをみつめて
罪を犯した自身の心を修復したことがよくわかるからです。

そして将来の目標も明確で、
これなら、よほどずれない限り
人生のリカバリーはできる、と感じました。

あとは、人に必要とされ、感謝されることを第一義にして
それを行動基準にできればまず大丈夫でしょう。

受刑者との文通①

刑務所で受刑中の男性と文通始めました。
先月、手紙をおくったところ、
今日、返事がきました。
年齢は32歳、満期出所まであと4年半とのことです。
丁寧な文字で書かれてあり、
私の仕事、WEB解析士の仕事にも興味があるとのことです。

出所時、まだ30代なので、
まだやりなおしは効くでしょう。

私が説教じみたことをいうことはまずない(笑)

自分を見つめ、
自己と対話することをすすめてます。

自分の過去、家族のことなど
眼をそむけたくなるような自分のことから
目を背けず、みつめることが
再スタートのための起点となります。

そこから自分のコアになるものをつかんで
無駄なもの、腐った部分を剪定し、
新しい方向にむけて、再スタートできるかどうか。

なんとかいい相談相手になれて
彼の新しい人生に
いい意味での影響を与えることができれば
幸いです。

山口達也さんの再起を考える

「山口メンバー」という言い方に違和感を覚えるが・・

アルコール依存症で入院し、
退院したその日に焼酎1本を空け、
女子高生を呼び出し、
キスを迫ったというその行為は批判されるものの、
私自身は、アイドルグループとして成功しながら、
どうしてアルコールに依存しなければならなかったのか、
また、「Rの法則」でも出演者からは
「心配りのできる人」という評価を得ている「山口メンバー」が
なぜ、まるでスッポリとエアポケットに陥ったような行為に及んだのか、
ということに関心があります。

オウム事件の井上嘉浩死刑囚の手記を読んだことがある。
彼の幼少期に
「父は家で暴れた。大声をあげ卓袱台をひっくり返した。」といい、
つまり
「家でもくつろげない。」
そして、「中学生の頃、理想の大人像が描けなかった。」と語っている。

心のどこかに巣くった小さな虫食い穴。
その穴が、のちに井上死刑囚がオウム真理教に入信し
のちに狂気の事件へとつながっていく。

高校生の井上死刑囚を知る恩師がいうには
「まじめな生徒で、授業中座禅を組みながら授業を聞いていた」
ということもあったらしい。

つまり通常の感覚では理解しがたい
狂気を孕んだ人間のやったような事件であっても
実は、その発端は「普通の人」が何かの原因で
生じてしまった心に巣くう小さな闇が
いつしか大きなブラックホールへとすっぽりとはまってしまった、
というケースが多いと思えるのだ。

事実、多くの加害者家族の支援をしている
阿部さんの新書「息子が人を殺しました」を読んでも、
犯罪を犯した人も実は、
いたって普通の平凡な家庭のなかで育った
「普通の人」であることがわかる。

山口さんがアルコールに依存した心の空洞。
そして退院したその日に焼酎1本を空け
番組の出演者である女子高生を呼び出す心の隙間。

自分のこれまでを振り返りながら
その心に巣くう虫食い穴が何なのか、
それを見つめて、修復することが再起の第一歩だと思う。

私が知る健全な社会復帰を果たした
元受刑者のほとんどが
自分自身の心の病み(=闇)を謙虚に見つめ
修復することで再起を果たしている。

そのプロセスで家族関係がもたらす影響は大きい。
家族関係のゆがみが心に小さな傷を与え、
それがいつしか大きなブラックホールに吸い込まれていく、
井上死刑囚のケースはその典型であろう。

山口さんは一度、社会から離れ
自分の心を内観することで
その心の病み(=闇)を修復することが再起の第一歩だと思う。
おそらくそのプロセスは痛みを伴うであろうが、
しかし、そのプロセスの過程で
自分を深く知り、それがいつしか人間の深い真理を知ることにも通じるのである。

そして、いつか山口さんが
TOKIOのメンバーではなく、
一人のミュージシャンとして
裸一貫、ストリートライブからでも
再スタートし、それが社会に受け入れられる日が来ることを期待している。

社会もまた、罪を犯した人へ
いつまでも巨大な刑務所のごとくあってはならない。
それを受け入れ、再起を促すことも必要なのである。

再犯防止のためのフィンランドの取り組み

仮釈中に再犯を犯した人を2名知っている。
仮釈とは刑期を満期まで待たずに
刑務所から出所し、社会生活に馴染むための制度。
正確には仮釈放という。

隠語ではサンピンが刑期3分の1の仮釈がもらえるというもの
ヨンピンとは刑期の4分の1の仮釈。
仮釈がどの程度もらえるかは受刑者の生活態度と
被害者の感情によって決まってくる。

1人は北九州市に住むYさん。
PFI事業の活用で官民での運営による美祢刑務所で
3年の刑期のうち、ほぼサンピンの仮釈を得て出所した。
美祢刑務所は犯罪傾向の低い受刑者に更生プログラムを施し、
社会復帰を支援する目的で運営されている。
そのため、受刑者には個室が与えられ、
自由に出入りできる。
そこでほぼサンピン、10か月の仮釈をもらったのだから
Yさん、模範的な受刑者だったはず、である。

ところがなぜか、住居侵入し、
建設機器を窃盗、
質屋に持ち込んで足がつき、
逮捕、刑務所に逆戻り。
窃盗の罪に、
仮釈分の刑期も加算された量刑が科せられる。
しかも初犯刑務所ではなく、
やくざも多い累犯刑務所行き。

「どうして10か月も仮釈もらって、窃盗したんですか?」
と私が尋ねたところ、
Yさん
「そこに家があったから」

(おいおい、登山じゃないだろ!)

まあ、経済的に窮していたということだろう。

もう一人はXさん。
初犯刑務所である大分刑務所にいて、
仮釈中に、スナックに行き、
呑んだ勢いで
女性従業員に強制わいせつ、逮捕。
生活保護を受けていたようだが、
つまり、人恋しさと
性欲とが酒の勢いで
暴発してしまった、ということだろう。

まあ、どちらも本人が悪いと言ってしまえばそれだけなんだけど・・・
仮釈中なんだから保護司の管理下にあったはず。
経済的に窮していたYさんについては生活保護を受けるようアドバイスしてもよかったのではないかと思う。

Xさんについてはもう少し保護司の人が話し相手、相談相手になってもよかったのではないだろうか・・・

もちろんボランティアで活動している保護司の人の多くは篤志家で、人格者なのだが、この二人のケースについては、実質的に保護司としての役割が機能しなかったともいえる。

犯罪件数が少ないの日本ではあるが
再犯率は先進国でも高いらしい。
もっとも低いのはフィンランドだそう。
フィンランドでは刑務所内で
受刑者に「回復プログラム」が施されるらしい。
つまり罪への刑罰というよりは
刑罰も含めて受刑者が社会復帰できるよう、
再犯を犯さないよう、指導する。

フィンランドが昔からこうだったというわけではないらしい。
数十年前のフィンランドは、ヨーロッパで受刑率がもっとも高い国の一つだったそうだ。

1960年代当時、北欧各国の研究者が、
どの程度の刑罰を与えれば犯罪抑制に実際に効果があるのかという調査を開始した。
その結論は、効果なし、というものだった。

投獄では実際には効果がない、ということが、
本格的な研究で初めて示されたケースだったわけだ。

これ以後の30年間、フィンランドは自国の刑事政策を少しずつ改変した。
そして、フィンランドはヨーロッパ大陸でもっとも受刑率が低い国の一つとなっている。
その結果犯罪が増加するということもなかった、そうである。

日本における元受刑者に対する見方は
社会全体が罰を与えるという見方が主である。

しかし、それは逆に元受刑者を再犯に追い込むことにもつながっている現状を少し考え直した方がいいと思う。

いわゆる「修復的司法」という考えである。

再犯防止のためには、社会のパラダイムシフトが必要だと思う。